腱板断裂は、肩の奥で腕を支えている腱(腱板)が切れてしまう状態です。腕が上がらない、夜に肩が痛むといった症状が五十肩とよく似ているため、「五十肩だと思って様子を見ていたら、実は腱板断裂だった」ということが少なくありません。

帝都メディカルクリニック(東京都足立区西新井)では、藤田医師が超音波(エコー)で腱の状態を確認し、注射とリハビリによる治療を行っています。手術が必要かどうかの判断が必要な方は、毎月第3木曜午後の肩肘専門外来(上田祐輔医師)へおつなぎしています。

本記事では、腱板断裂と五十肩の違い、断裂を放置した場合のリスク、手術を考える目安を医師の視点で解説します。

結論:腱板断裂は、五十肩と違い「人に持ち上げてもらえば腕は上がるのに、自分の力では上げにくい」のが特徴です。多くは注射とリハビリで改善を目指せますが、力が入らない状態が続く場合は手術も選択肢になります。
※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、診断・治療方針は患者さんの状態によって異なります。気になる症状がある方は、必ず担当医とご相談ください。

1. 腱板断裂とは?肩の腱が切れるとどうなるのか

腱板は、肩甲骨から腕の骨(上腕骨)の付け根につながる4つの筋肉の腱の集まりです。腕を上げたりひねったりするときに、上腕骨の先端を肩の受け皿に引きつけ、関節を安定させる役割を担っています。

この腱が切れた状態が腱板断裂です。断裂には、転倒やスポーツなどのけがで起こるものと、加齢による腱の傷みが積み重なって、はっきりしたきっかけがないまま起こるものがあります。40代以降に増え、利き腕に起こりやすいとされています。

こんな症状が出ます

  • 腕を上げる途中(肩の高さ前後)で痛みが走る
  • 腕を上げた状態を保てない、物を棚に上げにくい
  • 夜、寝返りや痛む側を下にしたときに肩が痛む(夜間痛)
  • 腕を上げ下ろしするときに、肩の中でゴリゴリ・ジャリジャリした感じがある
  • 以前より腕に力が入りにくくなった

一方で、腱板が切れていても痛みがほとんどない方もいます。症状のない腱板断裂は年齢とともに珍しくなくなることが、国内の住民を対象にした調査でも報告されています。

2. 腱板断裂と五十肩はどう違うのか?見分けるポイント

どちらも「肩が痛い」「腕が上がらない」という症状が出ますが、肩の中で起きていることは異なります。

五十肩(肩関節周囲炎)は、関節を包む袋(関節包)に炎症が起きて硬く縮み、肩そのものが固まってしまう状態です。腱板断裂は、肩を動かす腱が切れて、腕を持ち上げる力が伝わりにくくなる状態です。

腱板断裂と五十肩の違い

比べるポイント 腱板断裂 五十肩(肩関節周囲炎)
肩の中で起きていること 腕を動かす腱が切れている 関節を包む袋が炎症で硬くなっている
人に腕を持ち上げてもらうと 上がることが多い 固まっていて上がりにくい
自分の力で腕を上げると 力が入らない、途中で痛む どの方向にも動かしにくい
きっかけ 転倒・重い物を持った後のことも、きっかけがないこともある はっきりしたきっかけがないことが多い
自然な経過 切れた腱は自然にはつながらない 1〜3年かけて回復に向かうことが多い

ただし、腱板断裂と五十肩が同時に起きていることもあります。肩肘専門外来を担当する上田医師は、肩の拘縮(固まり)に合併する腱板損傷を379肩で調べた研究を発表しています。「五十肩」と言われて治療を続けても良くならない場合は、腱板の状態を確かめることが大切です。

五十肩の経過や放置するリスクについては、五十肩を放置するリスクの記事で詳しく解説しています。

3. 腱板断裂を放置するとどうなるのか?

切れた腱は、皮膚の傷のように自然につながることはありません。痛みが落ち着いて普段の生活に支障がなくなる方もいますが、次のようなリスクがあります。

  • 断裂が広がる:残っている腱に負担がかかり続け、時間とともに断裂が大きくなることがあります
  • 筋肉がやせて戻りにくくなる:断裂した腱につながる筋肉が使われなくなり、やせたり脂肪に置き換わったりします。こうなると、手術で腱を縫い合わせても元の力が戻りにくくなります
  • 手術の選択肢が狭まる:断裂が大きく古くなるほど、腱を元の位置に縫い付けることが難しくなります
  • 関節の変形:大きな断裂が長く続くと、肩関節の軟骨がすり減り、変形が進むことがあります

「痛みがあるけれど我慢できる」という段階でも、一度は腱の状態を確認しておくことで、治療の選択肢を残すことができます。

4. 腱板断裂はどうやって診断するのか?

診察では、どの動きで痛むか、腕をどの角度まで自分で上げられるか、人が持ち上げたときとの違いはどうか、腕を外にひねる力や上げた位置で支える力が落ちていないかを確認します。

当院では、超音波(エコー)を使って、その場で腱板の状態を確認しています。エコーは放射線を使わず、腕を動かしながら腱の様子を見られる検査です。

断裂の大きさや筋肉の状態を詳しく調べるためにMRIが必要と判断した場合は、外部の医療機関へご案内します。当院にMRI設備はありませんが、検査結果をもとに治療方針を決めていきます。

5. 腱板断裂は手術しないと治らないのか?保存療法の選択肢

切れた腱そのものは自然にはつながりませんが、腱板断裂があっても、注射とリハビリで痛みが和らぎ、日常生活に困らない状態まで回復する方は少なくありません。まずは手術をしない治療(保存療法)から始めるのが一般的です。

注射治療

痛みが強い時期には、エコーを使った肩の注射治療で炎症と痛みを抑えます。

  • 肩峰下滑液包注射:腱板の上にある袋(滑液包)の炎症を抑え、腕を上げるときの痛みや夜間痛を和らげます
  • ヒアルロン酸注射:関節の動きをなめらかにし、痛みを和らげます
  • 肩甲上神経ブロック:肩の痛みを伝える神経の働きを一時的に抑え、強い痛みを和らげます

リハビリテーション

痛みが落ち着いてきたら、リハビリで肩の動きと力を取り戻していきます。

  • 切れずに残っている腱板の筋肉を鍛え、肩を安定させる
  • 肩甲骨まわりの筋肉を整え、腕を上げる動きを助ける
  • 肩が固まらないよう、動かせる範囲を保つ
  • 日常生活で肩に負担をかけない腕の使い方を身につける

当院では、国家資格を持つスタッフが1対1のマンツーマンリハビリで、一人ひとりの肩の状態に合わせたプログラムを作成します。

「注射だけ」と「注射+リハビリ」の違い

  • 注射だけ:痛みは和らぐが、腕を支える力は戻らないため、腕を上げる動作のたびに痛みを繰り返しやすい
  • 注射+リハビリ:痛みが落ち着いている間に残っている筋肉と肩甲骨の動きを整えることで、切れた腱の働きを周りの筋肉で補い、腕を使える状態を目指せる

6. 手術を考えるのはどんなときか?目安となる5つのポイント

手術が必要かどうかは、断裂の大きさだけでなく、年齢、仕事やスポーツでの腕の使い方、痛みの程度、保存療法への反応をあわせて判断します。一般的に、次のような場合は手術が選択肢に入ります。

  1. けがをきっかけに急に腕が上がらなくなった:転倒などで腱が新しく切れた場合は、時間がたつ前に治療方針を決めることが大切です
  2. 保存療法を続けても痛みや力の弱さが改善しない:注射とリハビリを数か月続けても、日常生活や睡眠に支障が残る場合
  3. 仕事やスポーツで腕を頻繁に上げる必要がある:腕を使う仕事や、肩を使うスポーツへの復帰を目指す場合
  4. 断裂が広がってきている:経過の中で症状や検査所見が悪化している場合
  5. 比較的若く、活動量が多い:今後長く肩を使っていく方では、断裂の拡大を防ぐ目的で手術を考えることがあります

代表的な手術は、肩に小さな穴を開けてカメラを入れ、切れた腱を骨に縫い付ける「関節鏡視下腱板修復術」です。手術後は装具で肩を一定期間守り、その後数か月かけてリハビリを行います。

手術の判断は肩肘専門外来でご相談いただけます

当院では、毎月第3木曜の午後に肩肘専門外来を設けています。担当の上田祐輔医師(医学博士)は、保存治療から手術治療まで肩・肘の診療に長く携わってきた医師です。

画像と症状、年齢や生活での腕の使い方をあわせて手術の必要性を判断し、手術が必要な場合はその内容と見通しをご説明したうえで、手術に対応できる医療機関へご案内します。手術後のリハビリは当院で続けていただけます。

7. 帝都メディカルクリニックではどのように治療を進めるのか?

  1. 問診・診察:痛みが出たきっかけ、痛む動作、夜間痛の有無、仕事やスポーツの状況を伺い、腕の動きと力を確認します
  2. 画像検査:レントゲンとエコーで骨と腱板の状態を確認します。必要に応じて外部の医療機関でMRIを撮影していただきます
  3. 治療方針のご相談:注射とリハビリによる保存療法を基本に、症状に合わせた治療をご提案します
  4. 注射・リハビリ:痛みを抑えながら、マンツーマンリハビリで肩の動きと力を取り戻していきます
  5. 専門外来へのご案内:改善が乏しい場合や手術の判断が必要な場合は、肩肘専門外来で上田医師が診察します

診察・検査・注射・リハビリは健康保険が適用されます。肩肘専門外来も通常の保険診療で、特別な料金はかかりません。

8. すぐに受診すべき肩の痛みのサインは?(緊急サイン)

次のような症状がある場合は、腱の新しい断裂や骨折・脱臼、感染などの可能性があります。

  • 転倒や強い衝撃のあと、急に腕が上がらなくなった
  • 肩が変形している、肩が外れた感じがして戻らない
  • 肩が赤く腫れて熱を持ち、発熱を伴っている
  • 腕や手に力が入らない、しびれが急に強くなった
  • 安静にしていても痛みが増していく

これらに当てはまる場合は、専門外来の日を待たずに、その日のうちに医療機関を受診してください。当院の通常の診療日にご連絡いただければ、まず藤田医師が診察し、必要に応じて専門外来や連携医療機関へおつなぎします。

よくある質問(FAQ)

Q. 腕が上がるので、腱板断裂ではないと思っていました。

腱板の一部が切れていても、残っている腱や周りの筋肉が働くことで、腕が上がる場合があります。腕は上がるけれど途中で痛む、上げた状態を保てないといった場合は、腱板断裂の可能性があります。エコーで確認できますので、ご相談ください。

Q. 切れた腱板は自然にくっつきますか?

切れた腱板が自然に元どおりつながることはありません。ただし、断裂があっても、周りの筋肉で働きを補うことで痛みが和らぎ、日常生活に困らなくなる方は多くいらっしゃいます。断裂が広がっていないかを定期的に確認しながら治療を続けることが大切です。

Q. 五十肩と言われて治療していますが、なかなか良くなりません。

五十肩と腱板断裂は症状が似ており、両方が同時に起きていることもあります。治療を続けても改善が乏しい場合は、腱板の状態をあらためて確認することをおすすめします。当院では、必要に応じて肩肘専門外来で詳しく診察します。

Q. 腱板断裂の痛みに注射は効きますか?

注射は、断裂に伴う炎症や痛みを和らげる効果が期待できます。切れた腱をつなげるものではありませんが、痛みが落ち着くことでリハビリを進めやすくなります。注射の種類や回数は、症状に合わせて医師が判断します。

Q. 高齢でも手術はできますか?

年齢だけで手術ができないということはありません。断裂の状態、筋肉の状態、全身の健康状態、手術後のリハビリに取り組めるかなどをあわせて判断します。手術を受けるかどうかは、見通しを聞いたうえでご本人のご希望をふまえて決めていきます。

Q. 手術をした場合、仕事や家事にはいつ戻れますか?

断裂の大きさや手術の内容、仕事の種類によって異なります。一般的に、手術後しばらくは装具で肩を守る期間があり、腕を使う作業への復帰には数か月単位のリハビリが必要です。具体的な見通しは、肩肘専門外来でご説明します。

Q. 夜、肩の痛みで目が覚めます。腱板断裂でしょうか?

夜間痛は腱板断裂でよく見られる症状ですが、五十肩や石灰沈着性腱炎などでも起こります。原因によって治療が異なるため、診察とエコーで確認することが大切です。夜間痛については夜中に肩が痛くて目が覚める原因の記事もご覧ください。

Q. 肩肘専門外来を受診するには紹介状が必要ですか?

紹介状は必要ありません。通常の予約(お電話または24時間Web予約)で、第3木曜午後の枠をお取りください。他院で検査を受けている方は、画像や結果をお持ちいただくと診察がスムーズです。

足立区・西新井エリアで肩の痛みにお困りの方へ

帝都メディカルクリニックは、東武スカイツリーライン「西新井駅」より徒歩1分の場所にあります。足立区はもちろん、北千住・綾瀬・草加方面からも多くの患者さんにご来院いただいています。

  • 肩肘専門外来:毎月第3木曜日 午後(担当:上田祐輔 医師)
  • 所在地:東京都足立区西新井
  • アクセス:西新井駅 徒歩1分
  • 電話:03-3889-1371
  • 予約:診療時間内のお電話に加え、24時間Web予約をご利用いただけます

急に激しい肩の痛みが出た方は、石灰沈着性腱炎の症状と治療の記事もあわせてご確認ください。

まとめ

腱板断裂は、五十肩とよく似た症状で始まりますが、腕を持ち上げる力が落ちる点が大きな違いです。切れた腱は自然にはつながらないものの、注射とリハビリで痛みが和らぎ、日常生活を取り戻せる方は少なくありません。

一方で、力が入らない状態が続く場合や、けがをきっかけに切れた場合は、手術も含めて早めに治療方針を決めることが大切です。当院では、普段の診療とマンツーマンリハビリに加え、肩肘専門外来で手術の判断までご相談いただけます。

肩の痛みや腕の上げにくさが続いている方は、一度ご相談ください。

※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、診断・治療方針は患者さんの状態によって異なります。気になる症状がある方は、必ず担当医とご相談ください。