硬膜外ブロック注射とは

硬膜外ブロック注射は、強力な鎮痛効果で知られる痛みの治療法です。

痛みの原因部位へ直接局所麻酔薬やステロイド薬を注入し、神経の伝達をブロックします。

以下のような方に推奨される治療方法となっております。

・通常の薬物療法やリハビリテーションでの効果が見られない方
・痛みが日常生活に影響している方

該当される患者様は、診察時にお声掛けください。状態に応じて検討させていただきます。

実際の治療手順

 

治療手順
1.患者様はベッド上で横向きまたはうつ伏せの姿勢を取ります。
2.背中を丸めて、針が通りやすい体勢になります。
3.注射部位の皮膚を局所麻酔で麻酔します。この麻酔の時に少しチクリとした痛みがあることがありますが、強い痛みは稀です。
4.針を用いて硬膜外ブロックを施行します。この間、患者様はほとんど痛みを感じることはありません。

 

硬膜外ブロックの合併症

硬膜外ブロックには、いくつかの注意すべき合併症があります。以下に紹介します。

軽微な合併症

  • ブロック針を刺した箇所からの軽い出血
  • 皮下出血、あざ
  • 交感神経ブロックによる血圧低下
  • 消毒薬に対するアレルギー(皮膚の発赤)
  • 一時的な運動神経麻痺

重篤な合併症

  • 局所麻酔中毒(1万例に1.2〜11例程度)
  • クモ膜下ブロック(1%以下)
  • 硬膜誤穿刺
  • 硬膜穿刺後頭痛
  • 神経障害(0.06%)
  • 硬膜外血腫(0.01%以下)
  • 硬膜外膿瘍(0.01%以下)

 

当院では、硬膜外ブロック後には、重篤な合併症を早期に発見するため30分ほど処置室のベッドでお休みいただいております。ご自宅に帰られて何か異常を感じた際には、当院までご連絡をお願いいたします。

硬膜外ブロックQ&A

Q:硬膜外ブロックはその場しのぎの痛み止めなんじゃないの?

A:半分正解で、半分不正解です。確かに硬膜外ブロックは急性期の鎮痛をするのに用いられているので、とにかく痛みを取りたいときのために用いられる鎮痛法です。腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症では神経周囲に「発痛物質」が貯まるとされます。ブロックで用いる局所麻酔薬により発痛物質が洗い流されることで、新たな痛みを生じにくくする効果があります(ウォッシュアウト効果)。慢性腰痛では交感神経の活動が高まっており、痛みがさらに生じやすい状態になっています。硬膜外ブロックは交感神経を同時にブロックするため、副交感神経が優位となり痛みが生じにくい環境を整えます。

Q:ブロックはくせになるって聞きましたよ。

A:ブロックには精神的依存も肉体的依存もありません。一度打ち始めるとずっと打っていかなければならないということもありません。単発のブロックで治療が終了することは稀ですが、複数回繰り返す場合でもブロックを続けていくと徐々に痛みの強さや頻度は減少していくことが多いです。痛み自体が弱まっていれば、ブロックを行う頻度自体を減らしていくことができます。実際に当院では、ある程度ブロックを継続したところでほとんどの患者様が治療を卒業しています。ブロックへの反応が悪い痛みであった場合には、ブロックを無理に継続することはせず、別の治療方法をご紹介しています。

Q:何回打てば治るの?

A:ブロックの継続期間は患者様によってまちまちですので、症状次第と考えます。当院でブロックを行う場合、通常は3〜5回程度継続して行い、症状をみながらそのまま継続するかどうか再検討しています。経験からは、約半数の方が3〜5回でブロックを卒業しています。長期でブロックの継続が必要になっている場合や、ブロックへの反応が悪い場合は他の治療法をご紹介しています。

Q:血液サラサラの薬を飲んでるけど、硬膜外ブロックはできる?

A:申し訳ありませんが、抗血小板薬、抗凝固薬を服用されている方へは、硬膜外血腫予防目的に硬膜外ブロックの提供は致しかねます。