硬膜外ブロック注射は、背骨の中を通る神経の近くに薬を届けて、痛みを和らげる治療です。腰や足の痛み、しびれが薬やリハビリだけでは落ち着かないときに検討します。

帝都メディカルクリニック(東京都足立区西新井)では、藤田医師が診察で痛みの原因を見極め、硬膜外ブロックが合うと判断した場合に行っています。本記事では、硬膜外ブロックが効く仕組み、対象となる症状、当日の流れ、副作用と受けられない方、よくある質問を医師の視点で解説します。

結論:硬膜外ブロックは、神経のまわりの炎症と痛みの悪循環を断ち切る治療です。痛みが落ち着いている間にリハビリで体を整えることで、痛みを繰り返しにくい状態をつくりやすくなります。
※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、診断・治療方針は患者さんの状態によって異なります。気になる症状がある方は、必ず担当医とご相談ください。

1. 硬膜外ブロック注射とはどんな治療か?

背骨の中には、脳から続く脊髄と、そこから枝分かれする神経が通っています。これらを包む膜(硬膜)の外側にあるすき間を「硬膜外腔」と呼びます。

硬膜外ブロックは、この硬膜外腔に局所麻酔薬を注入する治療です。症状に応じてステロイド薬を加えることもあります。薬が神経の近くに広がることで、痛みの信号が伝わるのを抑えます。

注射する背骨の高さによって、頚部(首)、胸部(背中)、腰部(腰)、仙骨部(お尻の上)の硬膜外ブロックがあります。どこから行うかは、痛みの場所と原因によって医師が判断します。

こんな方に硬膜外ブロックを検討します

  • 腰からお尻、足にかけて痛みやしびれが続いている
  • 飲み薬や湿布を続けても、痛みが十分に取れない
  • リハビリを始めたいが、痛みが強くて体を動かせない
  • 歩くと足が痛くなり、休み休みでないと歩けない
  • 痛みのせいで眠れない、仕事や家事に支障が出ている

当てはまる方は、診察時にお声がけください。状態に応じて、硬膜外ブロックが合うかどうかを検討します。

2. 硬膜外ブロックはなぜ痛みに効くのか?3つの働き

硬膜外ブロックには、単に痛みを一時的に止めるだけではない働きがあります。

硬膜外ブロックの3つの働き
  1. 痛みの信号を止める(神経の伝達をブロックする)
  2. 痛みの原因になる物質を洗い流す(ウォッシュアウト効果)
  3. 交感神経の緊張をゆるめ、痛みが起きにくい状態に整える

痛みの信号を止める

局所麻酔薬が神経のまわりに広がり、痛みの信号が脳へ伝わるのを抑えます。強い痛みがあると、筋肉がこわばり、血の巡りが悪くなり、さらに痛みが強くなるという悪循環が起こります。痛みを止めることで、この悪循環を断ち切ります。

痛みの原因になる物質を洗い流す

腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症では、神経のまわりに痛みを起こす物質(発痛物質)がたまるとされています。注入した薬によって発痛物質が洗い流されることで、新たな痛みが生じにくくなります。これを「ウォッシュアウト効果」と呼びます。

交感神経の緊張をゆるめる

長く続く痛みでは、体を緊張させる交感神経の働きが高まり、痛みをさらに感じやすい状態になっています。硬膜外ブロックは交感神経も同時にブロックするため、体がリラックスした状態(副交感神経が優位な状態)になり、痛みが起きにくい環境を整えます。

3. どんな病気・症状に硬膜外ブロックが使われるのか?

硬膜外ブロックは、神経の圧迫や炎症が関わる痛みに広く使われます。主な対象は次のとおりです。

病気・症状 主な症状 硬膜外ブロックの役割
腰椎椎間板ヘルニア・坐骨神経痛 お尻から足にかけての痛み、しびれ 神経のまわりの炎症を抑え、痛みとしびれを和らげる
腰部脊柱管狭窄症 歩くと足が痛む・しびれる(間欠性跛行) 神経の血流を改善し、歩ける距離をのばす助けになる
ぎっくり腰(急性腰痛症) 急な強い腰の痛みで動けない 強い痛みを早く抑え、動ける状態に戻す
慢性腰痛 3か月以上続く腰の痛み 痛みの悪循環を断ち切り、リハビリを進めやすくする
帯状疱疹後神経痛 発疹が治ったあとも続く、焼けるような痛み 神経の痛みを和らげ、痛みが長引くのを防ぐ助けになる

症状ごとの詳しい解説は、坐骨神経痛と腰部硬膜外ブロック、腰部脊柱管狭窄症と硬膜外ブロック、ぎっくり腰と硬膜外ブロックの記事もあわせてご覧ください。

4. 飲み薬だけの治療と何が違うのか?

飲み薬は体全体に作用するのに対し、硬膜外ブロックは痛みの原因となっている神経の近くに直接薬を届けます。そのため、飲み薬では取り切れない神経の痛みにも効果が期待できます。

  • 飲み薬だけ:体全体に作用するため、神経の強い痛みは残りやすい。痛みが続く間は体を動かせず、筋力が落ちて回復が遅れることがある
  • 硬膜外ブロック+リハビリ:神経の近くで痛みを抑えている間に、リハビリで筋力と柔軟性を整えられる。痛みが戻りにくい体づくりにつなげやすい

当院では、硬膜外ブロックを「リハビリを始めるためのスタート地点」と考えています。痛みが落ち着いてきたら、国家資格を持つスタッフによるマンツーマンリハビリで、再発を防ぐ体づくりを進めます。

5. 治療当日はどのように進むのか?

硬膜外ブロックは外来で行う処置で、入院の必要はありません。当日の流れは次のとおりです。

  1. 診察:痛みの場所や強さ、服用中のお薬を確認し、硬膜外ブロックを行うかを判断します
  2. 姿勢をとる:ベッドの上で横向きまたはうつ伏せになり、背中を丸めて針が通りやすい体勢をとります
  3. 皮膚の麻酔:注射する部位の皮膚に局所麻酔をします。このとき少しチクリとすることがありますが、強い痛みはまれです
  4. 硬膜外ブロック:細い針で硬膜外腔に薬を注入します。この間、ほとんど痛みを感じることはありません
  5. ベッドで休む:重い合併症を早く見つけるため、処置室のベッドで30分ほどお休みいただきます

局所麻酔の影響で足にしびれや力の入りにくさが残ることがあるため、当日の車・バイク・自転車の運転は控えてください。ご自宅に帰られてから何か異常を感じた場合は、当院までご連絡をお願いいたします。

6. 副作用や合併症はあるのか?

硬膜外ブロックは広く行われている治療ですが、いくつか注意すべき合併症があります。頻度とあわせて紹介します。

軽い合併症

  • 針を刺した場所からの軽い出血
  • 皮下出血、あざ
  • 交感神経がブロックされることによる血圧の低下
  • 消毒薬に対するアレルギー(皮膚の赤み)
  • 一時的に足に力が入りにくくなる(運動神経の麻痺)

まれだが重い合併症

合併症 頻度の目安
局所麻酔中毒 1万例に1.2〜11例程度
くも膜下ブロック 1%以下
神経障害 0.06%
硬膜外血腫 0.01%以下
硬膜外膿瘍 0.01%以下

このほか、硬膜を誤って刺してしまうこと(硬膜誤穿刺)や、それに伴う頭痛(硬膜穿刺後頭痛)が起こることがあります。

硬膜外ブロックを受けられない方

抗血小板薬や抗凝固薬(いわゆる血液をサラサラにする薬)を服用されている方には、硬膜外血腫を防ぐため、硬膜外ブロックは行っておりません。服用中のお薬は、お薬手帳をお持ちいただき、診察時にお知らせください。

7. 注射のあと、すぐに連絡すべき症状は?(緊急サイン)

次のような症状が出た場合は、合併症の可能性があります。

  • 起き上がると強くなる頭痛が続く
  • 数時間たっても足の力が入らない、しびれがどんどん強くなる
  • 背中に強い痛みが出てきた
  • 注射した場所が赤く腫れる、熱を持つ、発熱がある
  • 尿や便が出にくい、肛門まわりの感覚がおかしい

これらに当てはまる場合は、様子を見ずに、その日のうちに当院へご連絡いただくか、医療機関を受診してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 硬膜外ブロックはその場しのぎの痛み止めではないのですか?

半分正解で、半分不正解です。確かに硬膜外ブロックは、とにかく痛みを取りたいときに使われる鎮痛法です。一方で、上で説明したウォッシュアウト効果や交感神経をゆるめる働きによって、新たな痛みが生じにくい状態を整える効果もあります。

Q. ブロックはくせになると聞きました。

ブロックには、精神的な依存も体の依存もありません。一度打ち始めるとずっと打たなければならない、ということもありません。単発で治療が終わることはまれですが、続けていくと痛みの強さや頻度が減っていくことが多く、痛みが弱まればブロックの間隔をあけていけます。当院では、ある程度ブロックを続けたところで、ほとんどの患者さんが治療を卒業しています。

Q. 何回打てば治りますか?

続ける期間は症状によって異なります。当院では通常3〜5回ほど続けて行い、症状を見ながら続けるかどうかを相談しています。経験上、約半数の方が3〜5回でブロックを卒業しています。長く続ける必要がある場合や、ブロックへの反応が悪い場合は、無理に続けずに別の治療法をご紹介します。

Q. 血液をサラサラにする薬を飲んでいますが、硬膜外ブロックはできますか?

申し訳ありませんが、抗血小板薬・抗凝固薬を服用されている方には、硬膜外血腫を防ぐため、硬膜外ブロックは行っておりません。痛みに対しては、飲み薬やリハビリなど、ほかの治療法をご提案します。

Q. 注射は痛いですか?

最初に皮膚の麻酔をするため、そのときに少しチクリとすることがありますが、強い痛みはまれです。硬膜外ブロックの注射中も、ほとんど痛みを感じることはありません。

Q. 注射を受けた日に仕事はできますか?

処置のあと30分ほどベッドでお休みいただき、体調に問題がなければお帰りいただけます。局所麻酔の影響で足にしびれが残ることがあるため、当日の運転は控えてください。重い物を運ぶお仕事など、内容に不安がある方は事前にご相談ください。

Q. ステロイドを使うのですか?

局所麻酔薬だけで行うこともあれば、神経のまわりの炎症が強いときにステロイド薬を加えることもあります。使う薬は、症状や持病をふまえて医師が判断します。糖尿病などの持病がある方は、診察時にお知らせください。

Q. 健康保険は使えますか?

硬膜外ブロックは健康保険が適用される治療です。費用は症状や検査内容によって異なりますので、受診時にお尋ねください。

足立区・西新井エリアで腰や足の痛みにお困りの方へ

帝都メディカルクリニックは、東武スカイツリーライン「西新井駅」より徒歩1分の場所にあります。足立区はもちろん、北千住・綾瀬・草加方面からも多くの患者さんにご来院いただいています。

  • 所在地:東京都足立区西新井
  • アクセス:西新井駅 徒歩1分
  • 電話:03-3889-1371
  • 予約:診療時間内のお電話に加え、24時間Web予約をご利用いただけます

3か月以上続く腰の痛みでお悩みの方は、慢性腰痛の原因と治療法の記事もあわせてご覧ください。

まとめ

硬膜外ブロックは、背骨の中の神経の近くに薬を届けて、痛みの信号を止め、痛みの原因となる物質を洗い流し、交感神経の緊張をゆるめる治療です。腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、ぎっくり腰、慢性腰痛、帯状疱疹後神経痛など、神経が関わる痛みに広く使われます。

当院では、硬膜外ブロックで痛みを抑えている間にリハビリで体を整え、痛みを繰り返しにくい状態を目指します。薬やリハビリだけでは痛みが取れずお困りの方は、一度ご相談ください。

※本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、診断・治療方針は患者さんの状態によって異なります。気になる症状がある方は、必ず担当医とご相談ください。