椅子から立ち上がる時の膝の痛み

階段の昇り降りでの違和感

長時間歩いた後の膝の重だるさ

これらの症状は、もしかしたら変形性膝関節症の初期サインかもしれません。

 

年のせいだから仕方ない」と諦めていませんか?

しかし、適切な対処法と予防策を知ることで、症状の進行を遅らせ、痛みを和らげることは十分に可能なのです。

多くの患者様が「薬で痛みを抑えたい」「注射で楽になると聞いた」というご希望をお持ちですが、薬物療法や注射治療と並んで、もう一つ極めて重要なアプローチがあります。それは、適切な運動療法とセルフケアです。

変形性膝関節症とは

変形性膝関節症は、膝関節の軟骨が徐々に摩耗し、関節の変形や炎症を引き起こす疾患です。

軟骨は関節の動きを滑らかにし、衝撃を吸収する重要な役割を果たしていますが、加齢や過度の負荷により徐々に摩耗していきます。

症状の特徴

症状は段階的に進行します。
早期発見・早期対処が症状の進行抑制に極めて重要です。

初期段階

  • 朝の起床時や長時間座った後の膝のこわばり
  • 立ち上がる際の軽い痛みや違和感
  • 階段昇降時の膝の不安定感

中期段階

  • 歩行時の持続的な膝の痛み
  • 膝の腫れや関節可動域の制限
  • 膝関節内での摩擦音

進行期段階

  • 安静時でも続く強い痛み
  • 明らかな関節の変形
  • 歩行距離の著しい制限

 

主な原因

1. 加齢による影響 軟骨を構成する成分が年齢とともに変化し、軟骨の弾力性や修復能力が低下します。

2. 肥満の影響 歩行時には体重の約3倍、階段昇降時には約7倍の負荷が膝関節にかかるため、肥満は軟骨の摩耗を加速させます。

3. 外傷歴 過去の膝の外傷は関節構造を変化させ、後に変形性膝関節症を発症するリスクを高めます。

 

日常生活でできる対処法

1. 適切な運動療法

 

膝周囲筋の強化
  • 大腿四頭筋(太ももの前面)の強化が特に重要
  • 強化された筋肉が関節を安定させ、軟骨への負荷を軽減

    推奨エクササイズ

    • 等尺性大腿四頭筋強化:椅子に座り膝を伸ばし5秒保持、10回×3セット
    • レッグレイズ:仰向けで片足を30度まで上げ5秒保持
    • 壁スクワット:壁に背中をつけて軽くしゃがむ運動

    ストレッチング
    膝関節周囲の筋肉の柔軟性を保ち、関節可動域を維持します。太ももの前後、ふくらはぎのストレッチが効果的です。

     

    有酸素運動
    水中ウォーキング、平地でのウォーキング、エアロバイクなど、関節への負担が少ない運動を継続しましょう。

    2. 体重管理

    体重1kgの減少は、歩行時の膝関節への負荷を約3kg軽減します。バランスの取れた食事と適度な運動で、月1-2kgの緩やかな減量を目指しましょう。

    3. 日常動作の工夫

    • 立ち上がる際は両手で支えながらゆっくりと
    • 階段では手すりを使用し、一段ずつ確実に
    • 椅子の高さを膝が90度になるよう調整
    • クッション性の良い靴や医療用インソールの使用

    4. 温熱・寒冷療法

    慢性的な痛みには温熱療法(入浴、ホットパック、蒸しタオル)で血流改善を。急性の炎症には15-20分の冷却が効果的です。

     

    専門医療機関での治療

    薬物療法

    • 内服薬(NSAIDs、アセトアミノフェン)
    • 外用薬(湿布、ゲル剤)

    注射療法

    • ヒアルロン酸注射:関節液の粘性改善
    • ステロイド注射:強い炎症の抑制
    • PFCFD療法:患者様自身の血液から抽出した血小板由来成分を関節内に注入し、自然治癒力を高める最新の再生医療

     

    理学療法 専門の理学療法士による個別指導で、患者様に最適な運動プログラムを提供します。

    手術療法 保存的治療で改善しない場合、関節鏡視下手術や人工膝関節置換術などが検討されます。

    当クリニックでの治療アプローチ

    私たちペインクリニックでは、患者様一人ひとりの症状や生活スタイルに応じた個別化された治療を提供しています。

    詳細な診断から治療計画の立案、継続的なフォローアップまで、多職種が連携してサポートいたします。

     

    まとめ

    変形性膝関節症は「年のせい」と諦める必要はありません。

    適切な運動療法、体重管理、日常動作の工夫により、症状の改善と生活の質向上は十分に可能です。

    重要なのは早期からの適切な対処です。軽微な症状でも軽視せず、当院受診時には気軽にご相談ください。