朝起きた時の膝の違和感、階段での痛み、長時間歩いた後の重だるさ—。
このような症状でお悩みではありませんか?

これらの症状は、変形性膝関節症の可能性があります。

変形性膝関節症は、加齢とともに発症頻度が高くなる疾患の一つです。

膝関節の軟骨が徐々に摩耗し、関節の構造に変化が生じることで、様々な症状が現れます。

現代の医療では、患者さんの症状や生活状況に応じて、多くの治療選択肢をご提案できるようになっています。

本記事では、変形性膝関節症の治療について、現在行われている様々なアプローチをご紹介します。

治療法の特徴を理解することで、医師との相談がより充実したものになることを願っています。

変形性膝関節症について

変形性膝関節症は、膝関節の軟骨が徐々に摩耗し、関節の構造が変化することで起こる疾患です。
症状の程度は個人差が大きく、軽微な違和感から日常生活に支障をきたすレベルまで様々です。

 

一般的な症状の経過

  • 初期:朝のこわばり、動き始めの違和感
  • 中期:歩行時の痛み、階段昇降時の症状
  • 進行期:安静時の痛み、関節の変形

症状の進行には個人差があり、必ずしもこの順序で進行するわけではありませんが、早期の適切な対応により、症状の進行を遅らせる可能性があります。

保存的治療

症状の程度や患者さんの状況に応じて、まず保存的治療が検討されることが一般的です。

薬物療法

内服薬

  • 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):痛みと炎症の軽減を目的として使用されます
  • アセトアミノフェン:比較的副作用が少ないとされる鎮痛薬です
  • その他の薬剤:症状や体質に応じて様々な薬剤が選択される場合があります

外用薬

湿布薬や塗り薬として、患部に直接使用する薬剤もあります。全身への影響を抑えながら、局所的な症状緩和を図ります。

装具療法

膝装具やインソールにより、関節への負荷軽減を図る治療法です。患者さんの症状や関節の状態に応じて、適切な装具が選択されます。装具の効果や使用感には個人差があります。

当院ではインソールを活用した治療も行っております。興味のある方は診察やリハビリ時に気軽にお声掛けください。詳細はこちら

理学療法(リハビリテーション)

理学療法は、変形性膝関節症の治療において重要な役割を担っています。

当院では、理学療法士による専門的な評価のもと、個人の症状に応じたプログラムが作成されます。

運動療法

筋力強化 膝周囲の筋力、特に大腿四頭筋の強化により、関節の安定性向上を図ります。患者さんの体力や症状に応じて、適切な強度で実施されます。

関節可動域訓練 関節の動きを維持・改善するためのストレッチングや関節運動を行います。継続的な実施により、関節の柔軟性保持を目指します。

歩行訓練 正しい歩行パターンの習得や、日常生活動作の改善指導を行います。膝への負担軽減と機能的な動作の獲得を目的とします。

 

注射療法

保存的治療で改善が見られない場合、注射療法が検討されることがあります。

ヒアルロン酸注射

関節内にヒアルロン酸を注入する治療法です。関節の潤滑性改善を目的とし、一定期間継続して実施されることが一般的です。効果の程度や持続期間には個人差があります。

ステロイド注射

強い抗炎症作用を持つステロイド薬を関節内に注入します。炎症が強い場合に検討され、症状の軽減が期待されます。使用回数や間隔については、医師による慎重な判断が必要です。

その他の注射療法

PRP(多血小板血漿)治療
患者さん自身の血液から血小板を濃縮した血漿を使用する治療法です。自己血液を使用するため、アレルギー反応のリスクが低いとされています。

PFCFD治療
当院では、患者さんご自身の血液を用いた新しい再生医療であるPFCFD(Platelet-rich Fibrin matrix Containing Freeze-Dried platelets)をご提供しています。この治療法は、血小板由来の成長因子を効率的に放出する技術を用いており、組織修復をサポートする可能性があります。

PFCFDは厚生労働省に再生医療等提供計画を提出し、承認を得た治療法です。患者さんの症状や状態に応じて、治療の適応について専門医が慎重に評価いたします。

外科的治療

保存的治療で改善が困難な場合、外科的治療が検討されることがあります。

関節鏡手術

小さな切開から内視鏡を用いて関節内の処置を行う方法です。比較的侵襲が少ないとされていますが、適応や効果については医師による慎重な評価が必要です。

骨切り術

関節の変形を矯正し、荷重のかかり方を改善する手術です。自分の関節を温存できる可能性がありますが、手術適応については十分な検討が必要です。

人工関節置換術

損傷した関節を人工関節に置き換える手術です。全置換術と部分置換術があり、関節の状態により選択されます。手術には一定のリスクが伴うため、十分な説明と検討が行われます。

治療選択における考慮事項

治療法の選択には、以下のような要素が考慮されます

  • 症状の程度と日常生活への影響
  • 患者さんの年齢と活動レベル
  • 併存疾患の有無
  • 治療に対するご希望
  • 各治療法のリスクと効果のバランス

これらの要素を総合的に評価し、患者さんにとって最も適切と考えられる治療法をご提案します。

日常生活での注意点

治療と並行して、日常生活での配慮も重要となります。

・体重管理 適切な体重維持により、膝関節への負荷軽減が期待されます。無理のない範囲での食事管理と運動が推奨されます。

・適切な運動 水中ウォーキングや軽いサイクリングなど、膝に負担の少ない運動の継続が推奨される場合があります。運動内容については医師や理学療法士にご相談ください。

・日常動作の工夫 階段昇降時の手すり使用や、適切な椅子の高さ調整など、日常動作での工夫により症状の軽減が期待される場合があります。

 

最後に

変形性膝関節症の治療には、患者さんの症状や生活状況に応じた様々な選択肢がありますが、適切な治療により症状の改善を図ることが可能です。

症状でお悩みの場合は、早めに専門医にご相談いただくことをお勧めします。

医師との十分な相談を通じて、あなたに最も適した治療法を見つけていただければと思います。