「運動は健康に良い」と聞いて始めたランニングが、実は膝を痛めていた。
そんな経験はありませんか?
変形性膝関節症と診断された、あるいは膝に違和感を覚えている方にとって、どんな動作が膝に負担をかけるのかを知ることは非常に重要です。
良かれと思って行っている運動や日常動作が、膝の状態を悪化させている可能性があります。
この記事では、変形性膝関節症の方が避けるべき運動や日常動作について、詳しく解説します。
避けるべき運動
変形性膝関節症では軟骨がすでに損傷しているため、膝への過度な衝撃や負荷が症状を悪化させる原因となります。
そこでまず注意したいのが、ランニングやジョギングなどの長時間走る運動です。
着地時には体重の約3〜5倍の衝撃が膝関節にかかるため、繰り返すことで軟骨の摩耗を促進させてしまいます。
同様に、バレーボールやバスケットボールなどジャンプを伴う運動も、着地時の衝撃により痛みや炎症を引き起こしやすくなります。
また、深いスクワットにも要注意です。
膝を90度以上深く曲げると、膝関節に大きな負荷がかかり、軟骨への圧力が高まります。
トレーニングを行う場合は、膝を90度以内に曲げる浅いスクワットにとどめることが重要。テニスやバドミントンのような急激な方向転換を伴うスポーツは、膝関節に回旋ストレスをかけるため、半月板や靭帯への負担となるからです。
運動を選ぶなら、ウォーキングやエアロバイク、水中運動など、膝への衝撃が少ないものを選びましょう。
日常生活で気をつけたいこと
日常生活では、正座を長時間続けることは避けてください。
正座は膝を深く曲げた状態を維持するため、関節に持続的な圧力をかけます。
そのため、椅子に座る、あぐらをかく、または正座椅子を使用するなど、膝を深く曲げない座り方を選ぶことをおすすめします。
草むしりや掃除など、しゃがみ込む作業も膝への負担が大きい動作です。
長時間のしゃがみ姿勢は特に避け、次のような工夫を取り入れてください。
- 膝をついて作業する(膝パッドを使用)
- 椅子に座って行う
- 長い柄の道具を使う
和式トイレの使用も深くしゃがむ必要があるため、可能な限り洋式トイレを選ぶようにしましょう。
階段の昇り降りでは、特に下りる動作に注意が必要です。
下りは上りよりも膝への負担が大きく、重い荷物を持っているとその負担はさらに増大します。
手すりを使ってゆっくり降りる、荷物は分割して運ぶ、可能であればエレベーターを利用するなどの対策を取りましょう。
生活習慣の見直し
体重管理は変形性膝関節症の管理において極めて重要です。
体重が1kg増えると、歩行時には膝に約3kgの負担が増えると言われています。
適正体重の維持を心がけ、必要に応じて医師や栄養士の指導のもとで減量に取り組むことが推奨されます。
立ちっぱなしや座りっぱなしなど、同じ姿勢を長時間続けると膝関節が硬くなり、動かし始めに痛みが出やすくなります。
30分から1時間ごとに姿勢を変え、軽いストレッチや歩行を取り入れることで、関節の柔軟性を保つことができます。
膝の冷えも症状を悪化させる要因です。
冷えると血行が悪くなり、痛みや硬さが増すため、サポーターや膝掛けで保温する、入浴で温めるなどの対策が有効です。
推奨される運動
避けるべき動作がある一方で、適切な運動は症状の改善に有効です。
以下の運動は膝への負担が少なく、推奨されます。
- 水中ウォーキング・水泳:浮力により膝への負担が大幅に軽減される
- エアロバイク:低負荷で膝の可動域を保つことができる
- 平坦な道でのウォーキング:15〜30分程度が目安
- 太ももの筋力トレーニング:膝を支える筋肉を強化できる
どの程度の運動が適切かは症状によって異なるため、必ず整形外科医や理学療法士に相談しながら進めましょう。
症状が改善しない場合の治療選択肢
日常生活の工夫や運動療法を続けても症状が改善しない場合、医療機関での治療が選択肢となります。
近年注目されているのが、患者さん自身の血液から抽出した成長因子を膝関節に注入するPFC-FD療法です。
組織の修復を促進し、痛みの軽減が期待できる再生医療として、変形性膝関節症の新しい治療選択肢となっています。
当院でもこの治療は可能です。興味のある方は診察時に気軽にお声掛けください。
まとめ
変形性膝関節症の管理において、膝に衝撃や過度な負荷がかかる運動や動作を避けることが重要です。
深くしゃがむ、正座する、重い荷物を持つなどの動作を控え、日常生活の工夫で膝への負担を減らしましょう。
同時に、適正体重の維持と、膝への負担が少ない適切な運動の継続も大切です。
症状の程度によって適切な対応は異なるため、整形外科医に相談しながら、自分に合った生活スタイルを見つけていくことをおすすめします。