帝都メディカルクリニック院長|藤田将英
冷え症の原因について

みなさんこんにちは、東京都足立区「西新井駅」徒歩1分にある帝都メディカルクリニック院長の藤田です。帝都メディカルクリニックでは、痛みの治療を専門とする「ペインクリニック」を開設しています。当ブログでは痛みを抱えて過ごされる患者様に役立つ痛みの情報を発信しています。
過去記事(https://www.teito-mc.com/post/%E5%86%B7%E3%81%88%E3%81%A8%E7%97%9B%E3%81%BF%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6)で冷えと痛みの関係について記事にしましたが、冷えの大きな原因の一つに冷え症があります。
今回は冷え症の原因についてまとめたいと思います。
冷え症とは何か
冷え症をwikipediaで調べると、以下の様に書かれています。
冷え性(ひえしょう)または、冷え症は、特に手や足の先などの四肢末端あるいは上腕部、大腿部などが温まらず、冷えているような感覚が常に自覚される状態のことである。 しかし、病態として統一的な定義は確立していないため、西洋医学的には漠然とした概念として捉えられている。
西洋医学的には、「冷え症」は病名ではなく、疾患概念としても確立していません。しかしながら特に女性では手足の冷えを訴える患者さんは多く、とても一般的な症状ですね。
一般に次の様な症状がある場合は、冷え症と判断します。
気温が低くないのに手足が冷える
布団に入っても手足が冷えて眠れない
お風呂から上がってすぐに手足が冷えてしまう
厚着をしても冷える
便秘や下痢をしやすい
痩せにくい
症状が続けば冷えから痛みに変わることもあり、なるべく早期に改善させたいところです。
冷え症の原因は
冷え性とは、末梢の毛細血管が収縮し、血流が滞ることで温かい血液が手足の先まで届かずに冷えてしまう状態のことを指します。冷え症の原因には以下のような生活習慣が大きく関わっています。
運動不足
ストレス
自律神経の乱れ
喫煙
食生活の乱れ
運動不足になると血流が減少するため、より末梢へ血液が届きにくくなります。また運動は熱産生を促すため、運動不足になると熱が作られにくくなります。
過剰なストレスは交感神経を活性化させます。交感神経は戦うための自律神経であり、末梢の毛細血管を収縮させて末梢の血液循環を悪化させてしまいます。
タバコに含まれるニコチンは、依存性を高めるだけでなく、副腎に作用することでカテコールアミンを分泌させ血管収縮、血圧増加、脈拍増加を引き起こします。血管収縮により末梢循環が悪化します。
脂質・糖質を多く含む食事を摂取することで血液は粘稠性を増し、ドロドロした血液になります。粘稠性の高い血液は循環しにくく、血流が低下します。また、脱水になれば粘稠性はさらに高まります。
また、病気ではありませんが、性差も冷えに影響します。女性は女性ホルモンの影響で、男性に比べて筋肉量が少なく脂肪量が多いため、冷えを引き起こしやすいと言われています。女性周期によっても影響を受け、特に生理中は血液量が減少するため末梢循環が低下します。
冷え症を漢方医学的に見ると
冷え症の原因を西洋医学的に見てきましたが、漢方医学的に見るとまた違った見え方もあります。
漢方的に見た冷え症の原因は以下の通りです。
水滞(水が溜まっている)
瘀血(血流が滞っている)
寒証(もともと手足が冷たく冷えやすい体質)
水滞は組織に水分が貯留しやすい人で、一般的には水太りと言われるような状態です。溜まった水が外気に冷やされてしまうことで冷えます。舌診(舌の形を診て診断する)所見が有名で、舌を出して診た際に「舌の側面に歯の痕が残る」ことで診断します。このタイプの人は余分な水分を排出することで冷えが改善することがあります。
瘀血は末梢組織で血液がうっ滞しやすい人で、静脈循環の低下が原因と言われています。西洋医学では動脈循環の低下に着目することが多いですが、漢方では静脈循環の低下により末梢に老廃物を含んだ悪い血液がよどみながら溜まる瘀血を重視します。舌診では、舌の裏側を診て静脈怒張(青筋が多い状態)があることで診断します。循環を改善することで冷えが改善することがあります。
寒証は身体全体の生理機能が低下している人を指します。顔が青白く、手足が冷えています。温かい飲み物を好む傾向があります。トイレが近くなりがちで、下痢を起こしやすい特徴があります。気温が寒くなると関節が痛むなどの症状があり、温めると逆に楽になります。高齢になると寒証になりやすくなります。ショウガやシナモン、香辛料などを取るようにすると改善することがあります。
冷え症に似た症状を出す疾患
手足が冷える症状を起こす疾患には以下のようなものがあります。
PAD(末梢動脈閉塞性疾患)
バージャー病
腰部脊柱管狭窄症
PADは、以前はASO(下肢閉塞性動脈硬化症)と呼ばれていた疾患です。一般的には動脈硬化性疾患で動脈が閉塞し末梢の血流が乏しくなることで発症します。末梢循環を促す薬物療法、あるいは外科療法が必要になる場合があります。
バージャー病はPADの類似疾患ですが、原因不明で起こる下肢動脈閉塞を引き起こす疾患です。40代の男性に多いとされます。喫煙との関連が深く、禁煙が治療の基本になります。
腰部脊柱管狭窄症は、腰椎(腰の背骨)の脊柱管(神経の通り道)が狭くなることで神経に障り下肢に疼痛、しびれなどを出す疾患です。間欠性跛行(かんけつせいはこう)が有名で、じっとしていれば痛みがないが歩行すると下肢に痛みが出てきて休み休み出ないと長距離歩行ができなくなることがあります。薬物療法、リハビリテーション、ブロック療法等の保存療法が行われ、重症例は手術で治療することもあります。
なかなかよくならない冷えには上のような疾患が隠れていることがあるため、心配なようであれば一度医療機関を受診することを勧めます。